多様性の時代というけれど・・・。映画『正欲』感想

20代の頃。それまで全くアイドルに興味のなかった私は急にSMAPに惹かれるようになり、曲を聞いたり動画を見たりして密かに応援していました。

そうしたら数年でまさかの解散・・・。悲しかった。

外山アナとの掛け合いが楽しかった『ゴロウ・デラックス』が終わってしまったのは惜しいなと思う私はSMAPのなかでは稲垣吾郎さん推しでございます。

さて、今回はそんな稲垣吾郎さんが出演する映画『正欲』を紹介していきます。

ちなみに原作は既に読んだことがあります。

目次

映画『正欲』をオススメしたい人

  • 自分の考えにとらわれがちな人
  • 「常識的に考えて~」が口癖の人
  • 自分の枠を壊したい人

映画のキャッチコピーが「観る前の自分には戻れない」とあるように、自分にとっての当たり前を揺さぶってくる作品です。

『正欲』作品情報

監督岸善幸  
原作朝井リョウ  
公開2023年
製作国日本
上映時間134分
主題歌Vaundy 「呼吸のように」

今作は第36回東京国際映画祭・コンペティション部門で最優秀監督賞・観客賞をダブル受賞しています。

朝井リョウさんにとっては作家生活10周年の記念作品で第34回柴田錬三郎賞を受賞し、ベストセラーとなっています。

『正欲』あらすじ

横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。

広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。

ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。

同じ地平で描き出される、家庭環境、性的指向、容姿     様々に異なる背景を持つこの5人。

だが、少しずつ、彼らの関係は交差していく。

映画『正欲』公式サイト Story (bitters.co.jp)(2023‐11‐18)

『正欲』登場人物

  • 寺井啓喜(稲垣吾郎) 横浜地方検察庁に勤務する検事。小学校4年生の息子・泰希は不登校状態。息子が学校に行かずにYouTube動画を配信していることをよく思っておらず、見守ろうとする妻と意見が合わない。
  • 桐生夏月(新垣結衣) 岡山駅に直結するイオンモールにある寝具店の販売員。人と関わることに消極的。中学校の同級生の結婚披露宴で、佐々木佳道と再会する。
  • 神戸八重子(東野絢香) 金沢八景大学に通う大学生。学祭実行委員で、「ダイバーシティフェス」を企画・運営する。
  • 佐々木佳道(磯村勇斗) 会社員。夏月の中学時代の同級生だが、3年の途中で転校した。
  • 諸橋大也(佐藤寛太) 金沢八景大学に通う大学生で、ダンスサークル「スペード」に所属している。昨年の学祭のミスターコンテストで準ミスターに選ばれた。

ダイバーシティとは日本語で「多様性」を意味する言葉だそうです。

印象に残ったキャストは?

ここからは個人的に印象に残ったキャストさんを紹介していきます。

東野絢香さん(神戸八重子役)

映画『正欲』で1番印象に残ったキャストは神戸八重子役の東野絢香さんです。私は初めて知った女優さんなのですが、有名な作品だとNHK朝ドラ『おちょやん』で主人公の親友役を演じられています。

インタビューで八重子との共通点を人と関わるときに諦めないタイプと語っています。

(参考サイト:「マイナビニュース」https://news.mynavi.jp/article/20231112-ayaka_higashino/ (2023‐11‐18))

私は合わないと思ったらわりとすぐにその人と関わるのを諦めてしまうタイプなので、少しうらやましいですね。

東野さんはWikipediaによると身長が170cmと女性にしては高身長ですが、映画では小柄に見えていたので意外でした。

八重子は男性恐怖症なのですが、日々不安や恐怖感を感じながらも学生生活を送っている様子が東野さんの演技から伝わってきました。唇をきゅっとすぼめるような表情が印象的で、それが頼りなさげな感じの表現につながっていたと思います。

大学の講義で自分の後ろに男性が座ることにも恐怖心がある八重子ですが、不思議と大也にはほかの男性に感じる恐怖を感じません。

八重子は大也に接近しようとしますが、大也はそれを拒否します。大也には水フェチという周囲に明かしていない性的指向がありました。

八重子は自分が男性恐怖症であることや、貴方のことを理解して関わりたいという思いを大也にぶつけます。

しかし大也の抱えているものは他者と容易に共有できるものではなく、そんなことに思いも至らずに踏み込もうとしてくる八重子に憤りをぶつけます。

この場面ですが原作を読んだときは八重子に正直イラっとしてしまいましたね。

「やめて~、大也はそんなの望んでないから!!」と心のなかで叫びながら読んだ記憶があります。

原作では八重子の大也に対する執着(といっていいのだろうか)がもっと描かれているので、映画以上に鬱陶しい感じになっていたんですよね。

映画は東野さんの切実な演技が光っていて、原作とはまた違った印象を受けました。

山田真歩さん(寺井由美役)

次に印象に残ったのは啓喜の妻・由美役の山田真歩さんです。

たびたび名前を見る女優さんですが顔と名前が一致しておらず、映画を観ている間は個人的に寺島しのぶさんに似ているような気がしていました。

不登校の息子を抱える不安や夫の息子への無理解に胸を痛めつつ、それでもなんとか家庭に波風をたてないように振る舞おうとしている妻の役を好演されていました。

特に心に残ったのは息子・泰希のYouTubeアカウントが突然停止されてしまい、これをきっかけに動画配信を辞めさせたらどうだという夫に「どうして泰希のことをわかろうとしてくれないの?」と泣きながらぶつかる場面です。

ゴローさん演じる啓喜ときたら、いつになっても妻や息子の気持ちに寄り添おうという姿勢がないんだもの・・・。

現実の家庭でも同じようなことはたくさん起きているだろうなと思いながら観ていました。

人に性的感情を抱けない女性・夏月

ガッキーこと新垣結衣さん演じる夏月も水フェチで、人間に対して性的感情を抱くことができない人です。

淡々と仕事をして周りと関わることもありませんが、1人だけ話しかけてくる同僚の女性がいます。

彼女は妊娠していて夏月に早く子どもを産まないと大変だよと言います。

私も働いていたときに言われたことあったなあ、こちらが何も言わないのに一方的にそういうことを言われるのはいい気分はしませんでしたが。

いつもなら適当に対応していた夏月ですが、ある日虫の居どころが悪いところに話しかけられて一言

「うっさい」とつぶやきます。

暗い目で相手を睨みつける夏月。

この映画のガッキーは暗さの宿った目が印象的でしたが、綺麗な人の怒った顔はより迫力を感じますね。

気分を害した相手に「1人だから話しかけてやってる」「(1人でいて話しかけてあげないといけないような空気を出しているのも)ハラスメントじゃないか」と言われてしまいますが、相手が望んでもいないのに彼氏の有無を聞いたり将来の出産の心配までしてくるアンタのほうがハラスメントだわ!と私は言いたいです・・・。

恋愛感情を伴わない結婚

夏月は中学生時代の同級生・佳道と再会し、水フェチという同じ性的指向をもった2人は世間から恋愛や結婚のことをあれこれ言われなくて済むように恋愛感情を伴わない結婚をします。

佳道を演じているのは磯村勇斗さんです。

最近磯村さんが出ている作品を観ることが多いのですが、普通の男性に見えるけどどこか底の知れない感じがする・・・という役柄が上手だなと思います。

ある日、夏月は2人分のコロッケを買って帰ろうとしますが、その道すがら自転車にぶつかられて転んでしまいます。

それを助け起こすのが啓喜なのですが、自分に配偶者がいる前提で話をする啓喜に夏月はなぜ結婚しているとわかるのか尋ねます。

「そりゃ、あなた指輪してますもの」と突っ込みたくなりますが、恋愛や結婚と無関係に生きてきた夏月にとってはそういう常識的なことさえとっさには浮かばないのかもしれないですね。

指輪をしているし、結婚していそうな雰囲気だからという啓喜に少し嬉しそうな顔を見せる夏月が印象的でした。

同じ指向を持つもの同士で集まれないかと考える佳道

夏月と結婚した佳道は他にも自分たちと同じような人がいるのではないか、そういう人同士がつながって何か出来ないかと模索し始めます。

夏月と佳道はもともとYouTubeで水の動画を検索する習慣がありましたが、その中には啓喜の息子・泰希が水遊びをする様子を配信する動画もありました。

そして水関連の動画には必ずコメントを残す常連アカウントがあり、佳道はその人物ともう1人(こちらは大也)とコンタクトを取り3人で会うことになりました。

佳道のこの行動がどんな結果をもたらすのか。この先が気になる方は映画を観てくださいね。

まとめ

映画『正欲』を観て、人と人が理解しあうのは改めて簡単なことではないと感じました。

「多様性を大切に」「異なる価値観を尊重しあおう」と言っても自分のなかの常識では想定できないような世界で生きている人がいることを普段の生活ではなかなか思い至らないですよね。

たとえば人と出会ったときに「この人は人間ではなく水に性的興奮を覚える人かもしれない」と考えるかというとまず私は考えないので、原作を読んだときも世の中にはさまざまな指向の人がいるのだと考えさせられました。

原作は映画に収まっていない部分もあり、登場人物の心理もよりわかりますので、こちらもぜひ読んでみてください。


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この記事を書いた人

駆け出しのブロガー。30代女性。気分変調症で療養中。社会復帰の一歩としてブログを始める。前職は医療事務。読書と映画鑑賞が趣味でオススメの作品を紹介。

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